リモートでActive Book Dialogue形式の読書会をやってみた

リモートでActive Book Dialogue形式の読書会をやってみた

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この記事は エンペイ Advent Calendar 2023 の14日目の投稿です!

昨日は小口さんのSlackスレッド内の質問を収集するbotを作ってみたでした。 ※ちなみに小口さん作成の質問収集bot、非常に便利に使わせていただいています。

こんにちは、エンペイでPMをしている竹村です。

エンペイでは、日々の業務の中で勉強会などの取り組みも多く行われています。

そのような取り組みの一つとして、以前チームで「Active Book Dialogue」という形式の読書会をリモートで実施したことがあったため、この記事で紹介したいと思います。

Active Book Dialogueとは

Active Book Dialogueとは、1冊の本を参加者全員で分担し、「本を読む・内容をまとめる・共有する」の流れをすべて当日で行うスタイルの読書会です。

メインのパートは以下のような流れで進みます。

  1. 担当した部分を読み、内容をまとめる(コ・サマライズ)
  2. 内容のまとめを順番にプレゼンする(リレープレゼン)
  3. 本の内容について、気になったところなどを対話をする(ダイアログ)
アクティブ・ブック・ダイアローグ協会HPより(

すべての作業が当日で完結し事前準備がいらないため、気軽に参加できるのがメリットです。

また、対話の時間がしっかり設けられており、参加者同士で内容に対して深掘りができるのも特徴です。

実施した背景など

私の担当しているkoufuri+チームでは、四半期ごとに振り返り&次の四半期の方向性を話す機会があります。

今年度の第1四半期の振り返りをしている中で、

「デリバリーは洗練されて確実にできるようになってきたため、次はディスカバリーのプロセスも高めていきたい」

という話があがりました。

チーム全員が同じような思いを持っていたため「よし、やっていこう」となったものの、ディスカバリーという活動に対して知識レベルや認識があまり揃っていないという課題がありました。

そこで

「まずは出発点となる共通認識を作るために、ディスカバリーについて語られている書籍を読書会形式で読もう」

という話になったことがきっかけです。

💡
※本旨とはズレるため「デリバリー」「ディスカバリー」についての詳細な説明は割愛しますが、
  • デリバリー:製品を作り顧客に届けること
  • ディスカバリー:作るべき製品を発見すること

ということを意味しています。

現代のプロダクト開発で広まっている「デュアルトラックアジャイル」の考え方における「デリバリー」「ディスカバリー」などと同じ文脈です。

詳しく知りたい方は以下の記事などが参考になるかと思います。

https://note.com/chankawa919/n/n093b48118b1c

題材の選定

まずは以下のような基準で書籍などを探しました。

  • ディスカバリー活動の全体像が見える
  • 各活動の具体的なテクニックが載っている

私がある程度候補を出し、チームで相談して題材を決めました。

候補の中には積読していたものもありましたが、この日のために眠らせておいたと言っても過言ではありません。

参考までに、候補にあげた書籍とディスカバリーについて言及されている箇所などを簡単にご紹介します。

  • INSPIRED -熱狂させる製品を生み出すプロダクトマネジメント
    • 「PART4:成功するためのプロセス」がほぼプロダクトディスカバリーに関すること。
    • 市場評価、課題発見、アイデア、プロトタイプ、テスト、ディスカバリースプリント、といった各ステップでのテクニックや考え方が語られている。
    • 比較的網羅的に語られている。
  • プロダクトマネジメント -ビルドトラップを避け顧客に価値を届ける
    • 「17章:問題の探索」「18章:ソリューションの探索」あたりで語られている。
    • 概要的な内容がメイン。
  • リーンスタートアップ
    • 仮説検証の重要性やMVPについては語られているが、ディスカバリーを網羅的には語られていない。
    • どちらかというと起業にフォーカスした内容。
  • Continuous Discovery Habits
    • 一冊まるまるディスカバリーに関する本。
    • オポチュニティーソリューションツリーという具体的なテクニックを軸にして、継続的なディスカバリーについて語られている。
    • 英語。
  • Lean UX
    • 一冊まるまるディスカバリーに関する本と言って良さそう。
    • タイトルの通り「UXデザイン」が軸になっている。
    • Lean UX キャンバスを軸に、各項目を深掘りしている。

チームで相談した結果、

「まずは全体像をつかむことを重視したい。具体的なTipsや細かい内容はその次のステップ。」

ということから、比較的網羅的に全体像が語られている「INSPIRED」を選定しました。

INSPIREDを読まれたことがある方はあまりそのイメージがないかもしれませんが、1セクションほぼ丸々ディスカバリーについて語られている部分がありました。

網羅的に語られているため、ディスカバリーについて学ぶ上で入り口としては良い題材かと思います。

なお、候補にあがった中で、Continuous Discovery Habitsは英語のため断念しましたが、個人的には近いうちに読みたいと思っています。

実施方法の選定

はじめからActive Book Dialogue形式でやると決まっていたわけではなく、元々は普通の読書会を想定していました。

書籍の選定をしている中で、メンバーから

「スピード感持つためにActive Book Dialogueを使ってもいいかも!」

と提案がありました。

私自身はActive Book Dialogueについて初見だったのですが、調べてみると

  • 事前の読書は不要で当日ですべて完結する
  • 対話で内容について深められる

という部分が今回の目的にもマッチしそうだったため、採用することにしました。

準備

題材と実施方法も決まったため、当日に向けて準備を進めました。

流れを決める

アクティブ・ブック・ダイアローグ協会のHP(https://www.abd-abd.com/)から、無料マニュアルがダウンロードできるため、そちらをベースに流れを決めました。

再掲になりますが、大きな流れとしては以下です。

アクティブ・ブック・ダイアローグ協会HPより(

また、この記事のような実施報告ブログなどもいくつかあるため、そちらも参考になるかと思います。

今回実施した具体的な流れや工夫などは後述します。

分量の確認と分担の区切りを決める

具体的な分担は当日決めることにしましたが、

  • どのくらいの時間が必要かの分量を確認する
  • 分担をどこで区切るのかを決めておく

という2点は事前に準備しておきました。

前者は、INSPIREDの中の今回対象にしない箇所で一人Active Book Dialogueを実施し、「〇〇分あれば●●ページくらいの読む&まとめるができそうだな」ということを確認しました。

この分量をベースに、今回対象にした箇所をだいたい30分くらいでできる分量で分割しました。

書籍の準備

この部分はリモート開催ならではかもしれません。

リアル開催であれば、1冊の書籍を裁断して配るという方法があるそうです。

これはこれで面白そうなのでいつかやってみたいのですが、今回はリモート開催かつ当日まで全員が顔を合わせることは難しかったためこの方法は取れず、素直に全員分の書籍を購入することにしました。

書籍の購入にあたっては、会社の書籍購入制度を活用させていただきました。

会社としてこうした制度があることは非常に助かっており、感謝しています。

FigJamの準備

こちらもリモートならではの準備になります。

内容をまとめるパートや対話のパートで利用するボードを準備しました。

リアル開催であれば、B5の紙5枚に内容をまとめて壁に貼り出し、付箋でコメントをつけ、対話のパートでは模造紙に色々書きながら話す、という方法が取られるそうです。

今回はリモート開催のため、これらをFigJamを使って実現しました。

当日利用したFigJamボード
当日利用したFigJamボード

当日の流れ

当日は以下のような流れで進めました。

  • オープニング(20分)
    • オリエンテーション(5分)
    • チェックイン(1分×4人)
    • Active Book Dialogueとは?&Active Book Dialogueの練習(10分)
  • 本編(150分)
    • 前半戦
      • 担当決め(5分)
      • 読書&サマライズ part1(30分)
      • リレープレゼンpart1(2分×4人)
      • (休憩)
    • 後半戦
      • 担当決め(5分)
      • 読書&サマライズ part2(30分)
      • リレープレゼンpart2(2分×4人)
      • (休憩)
    • ギャラリーウォーク(10分)
    • ダイアログ(50分)
  • エンディング(5分)
    • チェックアウト(1分×4人)

オープニング

まずはオープニングとして、流れの説明・チェックイン・練習などを行いました。

チェックインでは1人1分ずつ「普段月に何冊本を読むか&今日の意気込み」を話してもらいました。

その後、あらためてActive Book Dialogueについての説明や本日大切にしたいことを共有しました。

本日大切にしたいこととしては「完璧な要約を作る必要はないので肩の力を抜いて欲しい」ということや、「ダイアログパートが盛り上がるようリアクションを多めに取ってほしい」といった呼びかけをしました。

その後、練習として書籍の冒頭の数ページずつを分担し、「読む&まとめる&シェアする」という流れをやってみました。

本編(読書・サマライズ〜リレープレゼン)

本編では

  • 本を読む&内容をまとめる
  • まとめた内容を順番にプレゼンしていく

という流れを2回繰り返しました。

今回は、30分で15〜20ページくらいをスライド6枚以内にまとめるようにしました。

まとめ方としては以下をガイドラインとしました。

  • 私見は入れず、あくまで内容のまとめだけにする。(私見はダイアローグパートで語る)
  • できれば簡潔にする。(ただし、難しいためできる範囲で)
    • 1ページあたり5行以内程度
    • 1行10文字以内程度
  • コツとして、「担当箇所の全体をざっと読み、まとめる内容の骨組みを決めてから、要点となる箇所を細かく読む」という流れで進めるとまとめやすい。
このような形で6枚以内でまとめる
このような形で6枚以内でまとめる

全員なんとか時間内にまとめきることができ、我ながらちょうど良い分量にできたのではないかと思います。

リレープレゼンのパートでは、発表を聞きながらリアクションスタンプをつけるようにしました。

リモートだとなかなかリアクションがわかりにくいこともあるため、こうしてリアクションをつけていくと盛り上がりますね。

発表を聞きながら気軽にリアクションスタンプをつけていく
発表を聞きながら気軽にリアクションスタンプをつけていく

他の人の発表を聞くことで、自分が読んだ前後の内容がつながり「なるほどー!」という感覚を得られることが多くあります。

こうして発表を聞く側も集中して聞ける仕掛けになっているのも、Active Book Dialogueの良いところだなと思いました。

本編(ギャラリーウォーク)

10分時間を取り、各自スライドを見て気になったところに付箋をつけていきました。

感想・疑問・問いかけなどを付箋に書いていき、その後のダイアログパートではこの付箋の内容を取り上げながら対話をしていく流れです。

気になったことなどを付箋で書いていく
気になったことなどを付箋で書いていく

ちなみに、リアル開催の場合は実際に壁に貼られている紙を見て回りながら付箋を貼っていく形になります。

2人1組で一緒に見て回り、気づきをシェアし合いながら付箋を貼るという方法もあるようです。

リアル開催で人数が多い場合はぜひ試してみたいですね。

本編(ダイアログ)

50分ほど時間をとり、付箋が多く付いているところをを中心に対話をしていきます。

今回は特に結論を出すような場ではなかったため、アイデアや意見などをそのまま付箋に残していきました。

対話が盛り上がったところとしては

  • カスタマーレターの話
  • ハイブリッドプロトタイプの話(オズの魔法使いなど)
  • 需要のテストの話(フェイクドアやランディングページ需要テスト)
  • ディスカバリースプリントの話

などがありました。

エンディング

チェックアウトとして1人1分ずつ感想をシェアしました。

工夫・アレンジしたところ

以下のような部分を工夫・アレンジしました。

  • 「読書&サマライズ(30分)+リレープレゼン」の流れを2回に分けました。
    • 分量的には1回にまとめることもできたのですが、後半の方が内容が複雑なため、1回にまとめてしまうと負荷に偏りが出てしまうことからこのようにしました。
    • 1回目で感覚がつかめたことで少し複雑な内容の2回目もスムーズに進み、かつメリハリもついたため、この流れにしてよかったと思います。
  • アイスブレイクの題材として「普段読書をする量」を言っていき、普段の読書量が多い人が後ろ(≒複雑な内容)を担当するようにしました。
    • これがうまい分担だったかどうかはわかりませんが、分担の決め方を決めておいたことでスムーズな進行に役立ちました。
  • リモート開催ということもあり、リアクションスタンプをどんどんつけるように促しました。
    • 気になるところや共感するところにどんどんリアクションスタンプをつけることで、場が盛り上がり、全員の興味を可視化することもできました。
    • これに関しては、FigJamを使った同じようなディスカッションにおいて普段からチーム全体で意識できていたこともあり、今回もスムーズにできたと思っています。
  • 1人1枚だけ「絶対に話題に取り上げてもらえる付箋」を貼れることにしました。
    • 気になるところに付箋をつけ、付箋が多かったところをダイアログパートで取り上げることにしていましたが、絶対に話したい話題を拾えるようにする目的で作ってみました。
    • どこから話していくかを決める時に便利だったことと、参加者としても「話したかったことを話せなかった」が防げたため、よかったと思います。
  • 「話題チェンジタイマー」として、10分同じ話題を話していたら次の話題に移るようにしました。
    • ダイアログの時間が限られており、かつ結論を出す場でもないことから設けてみました。
    • 結果的にあまり活きる場面はありませんでしたが、1つの話題で時間がかかりがちなチームでは試してみてもいいかもしれません。

やってみての感想など

はじめての取り組みでしたが、当日時間内で集中してインプット・アウトプットができ、良い形式の読書会だなと感じました。

参加者からも以下のようにポジティブな感想が聞かれました。

  • 自分の読んでいる部分がどういう位置付けなのかわからない分、他の人の内容にも集中できた。
  • 一部しか読まない形式できちんと理解できるか不安もありましたが、思いの外よかった。
  • 共通の土台で議論ができたのも好感触だった。
  • 要約の時間はシビアだったが不可能ではない絶妙のバランスだった。
  • 前後のつながり意識しなくて済むし、本を読むことが目的にならず、割と濃い議論ができていた気がする。

リモート開催したことについて

一言で言うと、リモートでも全く支障なく開催できました。

書籍の準備やFigJamの準備など、リモート特有の準備はありましたが、会の進行や成果の面では全く問題なかったと思います。

ただし前提として、チーム全員が普段からリモートでのやり取りやFigJamの操作に慣れていたことは大きいかもしれません。

リモートに慣れていない方が参加される場合は、以下のようなポイントを意識すると良さそうかなと思います。

▼リモート開催におけるポイント

  • 使うツールの準備をしっかりしておく。
  • 参加者がある程度ツールの操作に慣れておく。
  • リアクションを多めに取るように促す。スタンプなどもうまく活用する。
  • 一人の人が話しすぎたり、話さなすぎたりしないようにファシリテーターがコントロールする。
  • 他の人の話を遮ったり、非難しないようにする。
  • 口を開きやすいようにアイスブレイクを入れる。

まとめ

Active Book Dialogueはなかなか良かったので、読書会をする際はぜひ試してみてください!

リモート開催する場合は、この記事が参考になれば嬉しいです。

明日のアドベントカレンダーはPM仲間の根津さんが担当です!

お楽しみに〜!🎅