こんにちは、エンペイという会社でCTOをしている田野と申します。
2022/10/19にenpay APIをリリースさせていただきました。
enpay APIとは我々が提供している集金業務をキャッシュレスに行うSaaS 「enpay」を外部システムとシームレスに連携する仕組みです。
正直、当初の予定ではリリースはもっと先の予定だったのですが、プロダクトを提供する中で、様々な発見があり、当初の計画よりもかなり早く提供することを決めました。
ここでは我々が何を見て、どのように考えAPIリリースに踏み切ったか、そこに至るまでの物語をお話しようと思います。
- この記事を読んでほしい人、書いてること
- 日本の業務システムではまだまだメジャーではないAPI
- ただし、トレンドが変わりAPIが必要になりそうな兆しはある
- 自社プロダクトを作り、マーケットに向き合うことで見えてきた違和感
- 独自の難しさがありハードルが高い決済機能
- そして、そもそもの創業の経緯とリンクしてくる
- おわりに
- エンペイと連携をお考えの皆様
- エンペイという会社に少しでも興味をお持ちの皆様
この記事を読んでほしい人、書いてること
- SaaSから発展していくプラットフォームやエコシステムに興味がある、プロダクトマネージャー、エンジニア、BizDevの方
- 日本のバックオフィス領域の商習慣を踏まえて、SaaSを提供している我々がどのような経緯でAPIが必要ということに気づき、提供するに至ったか
- APIの技術的な側面には触れていません(技術的なチャレンジもあったので、そのうちテックブログ出すかもしれないです。)
- 著者は、エンペイという教育業界の集金をDXする「やさしいFintech」の取締役CTOをしている田野というものです。
日本の業務システムではまだまだメジャーではないAPI
エンジニアであれば、slackやJIRAなどインテグレーションがあるのが当たり前かと思うのですが、日本のバックオフィスの業務システムにおいてはまだ十分に活用されているという状況ではありません。
これは日本の商習慣の問題もありますし、まだまだユーザーが思い描くユースケースを実現できるようなAPIを大半のプレイヤーが用意できていない、という事情があります。
中でもエンペイは日本の幼保、教育という伝統的なマーケットをメインにビジネスをしているということもあり、自社だけで用意して何とかなるものでもないし、当面は不要かと考えていました。
ただし、トレンドが変わりAPIが必要になりそうな兆しはある
ちなみにこれはあくまで現時点での話で、SaaSの本場アメリカでは、すでにAPIがないと話にならない、そして求められる要件も高くなってきており、このトレンドはいずれ日本にも来ると思われます。
またバックオフィスの基幹領域については、ポストモダンERPという概念が生まれてきています
従来、巨大なモノリシックなシステムで全てをカバーしていたのに対して、部門などの領域ごとに最適な小規模なサービスを導入し、基幹システムと小規模なサービス複数をつなげて運用するという概念です。
エンジニアでいうモノリスからマイクロサービスへという流れに少し似ていますね。 部署やチームがオーナーシップを持って、サービス運用について意思決定することで、それが結果として企業としての速度、変化への対応につながるという訳です。
この流れからも、いずれはサービスは狭く深くなっていき、それらがつながって全体像が形成されるという流れは来るように思えますが、今やるべきなのかという問いに、明確な答えは出ない状況が続いていました。
参考) 進出して分かった日本とアメリカのSaaSプロダクトニーズの違い(日本初SaaSでアメリカに進出しているcommuneさんの非常に貴重な知見です…!!!)
>SaaSはとにかくインテグレーション
>自分たちのサービスを使うユーザーは他にこういうSaaSを使っていて、ゆえに自分たちはこういうエコシステムの中で、こういう役割が期待されていて、そのなかでユーザーがこう使うからこの個別ニーズに対応するAPIを…の繰り返しが必要です。
自社プロダクトを作り、マーケットに向き合うことで見えてきた違和感
将来高い確率で来ると思っていますが、現時点ではまだまだマーケットにもパートナーにも求められているとは思えない
そして、APIにこだわらなくても従来の単純なファイル連携でも当面何とかなるとも思える。
(ユーザーはExcelに不慣れのため、整形してしょっちゅう壊れたり、問い合わせに発展したりするけど、、、)
ただそれでもこのタイミングで前倒ししてリリースしたのには理由があります。
我々は数年間、幼保、教育に向けて集金業務をキャッシュレスに行うSaaS 「enpay」を開発、提供してきました。
営業〜開発までを自社で行い、地道にお客様の声を聞きプロダクトを磨き、1社ずつ丁寧にお客様を増やしていきました。
その中でこちらから積極的に動いたわけではないのですが、時にはお客様から紹介いただき、時には直接問い合わせをいただき、1社、また1社と教育業界におけるバーティカルSaaSのプレイヤーから連携のお話をいただくことが増えてきました。
話を聞いていくと、ほぼ全ての事例が共通していて、業界特有の課題を解決する多くの機能を持っており、集金機能もあるものの、最後の決済という部分だけがないという状態でした。
多機能なプロダクトで、様々な設定やデータを参照し決済する金額の自動計算までもほぼできているのに、それを最後に決済するするというラストワンマイルが埋まっていない状態でした。
1社ならまだしも、なぜどこも共通の状況なのだろうか?と思えてきました。
独自の難しさがありハードルが高い決済機能
なぜいずれのプレイヤーも決済機能に手を出していないのでしょうか?
ECサイトなど、自社で決済を扱ったことのある方は「Stripeなどを導入したらすぐに実現できるのでは?」と思われる方もいるかもしれません。
ただ自社で決済機能を提供するのと、自社のお客様に決済機能を提供するのではまるでハードルが違います。
決済用語では加盟店開拓、包括加盟店などキーワードがあるのですが、お客様に決済機能を提供する上で様々なルール、お作法があり、それに対応する必要があります。よって開発はもちろんですが、運用についても大きなコストが求められます。
これが中々な高いドメイン知識を求められ、結構な初見殺しな落とし穴のある世界だと思っています(我々も死に至らない程度の、いくつもの失敗を重ねてきました、、、)
以上のように決済機能には独自の難しさがあることに加えて、バーティカルSaaSの特徴として、業界特有の課題を網羅的に解決するというところに価値があるということが挙げられます。
そもそもバーティカルSaaSが強く必要とされるのは、
- 業界特有の業務
- 構造的な特異性
- その他リテラシーなど
などがあり、汎用的なプロダクトを導入しても効果が出づらい、そもそも導入ができないという背景があるからです。
なのでバーティカルSaaSでは
- ソリューションの深さ、機能、表現などプロダクトのあらゆる部分において対象業界に合わせて最適化されたもの
- 特殊な業務群についてもそのプロダクトを入れれば全て対応できるという網羅性。いわゆる All in one。
が大切になってきています。
となると、カバーする業務の網羅性が重要で、決済機能はあくまでその中の1つという位置づけになります。
膨大な業界特有の案件がある中、1つだけ他の機能と開発も運用も全く性質が違う、リリースしたとしても大きな運用コストがかかり続けるということを踏まえると、もし自分がそのプロダクトのPdMだったとしても、決済には踏み込まないという判断をするかと思いました。
そして、そもそもの創業の経緯とリンクしてくる
もともとエンペイはキャッシュレスの大きな波を感じつつも、様々な理由でその波が届かない部分を救いたいという想いもあり起業した会社です。
この数年間で飲食店や小売店が次々キャッシュレス化していき、もはや財布なしで出歩けるようになったのに対して、教育などの一部の業界ではまだまだ現金が当たり前という状態です。
顧客だけでなく金融機関、既存のサービス提供しているプレイヤーも皆その課題は認識しており、お話すると、ひしひしと変えていきたいという想いが伝わってきます。
お話する方のバックグラウンドも様々で、我々同様、0から急拡大を目指す企業あれば、20年以上もサービスを提供し続けてきた伝統ある企業もあります。
このように業界を取り巻く様々なプレイヤー達が、変えていきたいという想いはあれど、様々な理由で中々実現できていません。
我々も自社プロダクトを開発、提供しており、そちらで少しでも業界を変えていければと思っているのですが、自社サービスで得たナレッジを活かして、集金と決済を起点に、分断されているお金の流れをつなげていくような存在になれないかと思いました。
我々は自分たちでもバーティカルSaaSを開発、提供したからこそ分かる、ナレッジを詰め込んだAPIを提供しています。
さらにenpayの強みはそこに顧客理解、アライアンス、ロビイングなど様々な領域のスペシャリストが集まっていることによる掛け合わせです。
連携といっても、ただAPIを提供して、開発してくださいでは何も動きません。
APIはあくまできっかけで、そこから関係する全てのステークホルダーにメリットがある設計をし、推進するには高いビジネス力が必要です。
enpayは開発力はもちろん、ビジネス力も高い組織になりつつあり、Goal Oriented(ゴールからの逆算)、Customer Centered(顧客中心)といったカルチャーもあり、この両輪で動いていける土台が整いつつあります。
まとめると
- マーケット、既存プレイヤーの強いニーズ。さらに独自性、ハードルともに高い決済領域のカバー
- 自社プロダクト開発で培ったナレッジを活かしたAPI
- ステークホルダーを巻き込みドライブさせる高いビジネス力
により集金と決済を起点に、分断されているお金の流れをつなげていくような存在になれると思っています。
現時点でも企業と利用者のお金の流れという重要な部分に入っていますが、そこでのキャッシュフローを起点にし、お金の流れをより円滑に、さらには新しいお金の流れを生み出していけないか
そして素晴らしいサービスを提供している各種プレイヤー、顧客をつなげ、共創することでより大きな価値を提供できることを目指していきたいと思っています。
エンペイは会社のミッションとして「やさしいフィンテックを。」を掲げています。
この「やさしい」には2つの意味があり、一つは使いやすさなどの易しさ、もう一つは他者に対しての優しさです。
実現したい世界へはまだまだ遠いのですが、我々がやらないと、誰も手を付けずどんどん遅れていく可能性も高いと思っており、非常にやりがいがあり、チャレンジングで面白いと思っています。
おわりに
エンペイと連携をお考えの皆様
もしエンペイとの提携に興味があるという方が入ればぜひお気軽にお問い合わせください。
ただAPI連携部分の開発お願いしますというのではなく、何の価値を、どのように共創していけるか、ぜひ一緒にディスカッションさせていただきたいと思っています!
エンペイという会社に少しでも興味をお持ちの皆様
まだまだ構想は始まったばかりで、この先さらに難しいチャレンジも控えています
エンペイでは様々な職種でメンバーを募集中です!
Meetyもありますので、少しでも気になる方はぜひMeetyでもTwitterでも構わないのでカジュアルにお話しましょう!